サッカー評 「豪州×日本」 10月11日

普段は音楽のことばかり書いていますが、たまには他のことも。
と言うことで、今日は昨夜の代表選について、稲田が独断と偏見で書かせて頂きます。


私は「突き指をしないサッカーならやっても良い」という親の許可のもと
子どものころからサッカーをやっていました。
ウィーン留学中も、本業そっちのけでウィーン市2部リーグ所属のチームで
2年間プレーしました。南米出身のメンバーが中心のチームでしたので、
自分にとって南米独特の個人技や戦術が斬新で、サッカーを通して
「新たな価値観」に触れることも出来ました。
ちなみに、キーパー以外すべてのポジションを経験しました。
最近の草サッカーでは、サイドバックと中盤が多いです。

さて、自分の話はこれくらいにして昨夜の代表選。

感想としては「悪くなかった」です。
メディアを通して伝わるハリルホジッチ監督の人間性はいまだに疑問ですが
(すぐ周囲のせいにする)、昨夜の戦術は評価すべきものだったと思います。
(ネットは相変わらず批判的なコメントが軒を連ねておりますが)

その理由をこれから一つずつ挙げていきます。

①PKによる失点はしたが、決定機は作らせなかった。

これまでオーストラリアを相手にこのような試合は
一度もしたことがありません。それほど昨夜の日本は組織で守り
終始安定していました。両サイドバックはしっかりと人を追い、徹底したマークで
相手を自由にさせませんでした。

これまでの日本は、両サイドバックが上がった隙をつかれ崩されるシーンが多く見られましたが、昨夜は違いました。唯一の失点シーンは、山口蛍のマークのずれにより
相手をフリーにしてしまったことで原口のファールにつながりました。
この点は反省材料でしょう。ボランチがゴール前でマークを外すなんて、言語両断です。(ボールを見るのではなく人を見ていれば防げた失点でした)

②ポゼッション(ボール支配)を放棄し現実的な戦い方に終始した。

日本代表の屋台骨である4人(本田、香川、長谷部、長友)の衰えが
まさか一度に同じタイミングで訪れるなんて、誰が想像したでしょうか。
本田長谷部はまだしも、香川は清武の一つ上。選手として一番脂が乗っている
年齢にも関わらず、ここ数試合のパフォーマンスは、思わず目を覆いたくなるものです。しかしこれも現実。この厳しい状況の中でも戦わなければなりません。

サプライズは2つありました。一つは本田のワントップ。そして絶不調香川の
トップ下起用。イラク戦の内容も考えて、清武の先発が大方の予想でしたので
試合前からブーイングの嵐だったハリル監督。
本田のワントップ起用は戦術的な理由ですが、香川に関しては、原口や清武ら
第2世代の台頭による「下剋上」に対する香川の「決意」が試されたのではないかと
思っています。崖っぷちの香川ですが、試合が始まってさらに驚いたことは
派手なプレーはないものの、スペースを埋める動きと献身的なディフェンスで、
日本の組織プレーに一役買っていました。これは香川の本来の姿ではありませんが
現実的な状況を鑑みた上での効果的なプレー内容でした。
創造性は清武の方が上ですが、結果からみるとトップ下の香川起用は吉と出ました。

③オーストラリアのサッカーに変化

強いフィジカルと高さを生かしたロングボール主体のサッカーは
オーストラリアの特徴ですが、ここ数年変化が読み取れます。
やはりこんなサッカーでは楽しくないし、プロリーグでこれをやられたら
お客さんが来なくなるでしょう。(これがAリーグのレベルがまだまだの理由)

これまでの戦い方とは違ったパス回しのサッカーで
先のアジアカップで優勝し自信を深めたオーストラリア。
W予選も3勝1分けと計算通りの結果を残し、
最高の状態でホームに日本を迎えました。
一方で、世代交代がうまく行かず、監督の進退問題までもが噴出する日本。

大方の予想は「オーストラリア勝利」でしたが、試合内容と結果は
オーストラリアのメディアや選手のコメントを見ると、彼らにとって
「負けに等しい引き分け」でした。

-ジェディナク(オーストラリア代表主将)
「僕らが悪かったとは思わないが、日本の罠にハマってしまった。それは僕たちの認識の甘さからくるものだ。間違っていたね。僕たちはそういった考えを改めていくつもりだよ」

-スピラノビッチ(元浦和レッズ所属)
「彼らは得点したあと、ハッピーで10人がボールのうしろにいた。過去の日本や選手からは、正直にこういうことを予測していなかった。本田や香川やミッドフィールドの他の選手が引いてボールの後ろでプレーすることは好まないと思っていたから」

先述しましたが、これほど安心して見られた理由は、オーストラリアの新しい
試みのポゼッションサッカーにあります。もともとロングボール主体のサッカー文化であるオーストラリアが、いきなり個人技とパスワークによるポゼッションサッカーに舵を切り替えたところで、そう簡単にうまくいくはずがありません。
中盤の崩しもなかったし、アイディアも欠如していました。
むしろロングボール主体のサッカーで来られた方が、日本は苦しめられたでしょう。

総括

①日本が自らの実力を認識し、ホームの相手をリスペクトし、組織的な守備を
 チーム戦術とした。
②オーストラリアのポゼッションサッカーが予想に反してしょぼかった。

2つの理由が1-1という結果をもたらしました。

さて、気になる日本代表の今後ですが
来月ホームで現在グループリーグ首位のサウジアラビアを迎えます。
ここは「負けられない戦い」ではなく「勝たないといけない戦い」です。

元々サウジアラビアと「相性」の良い日本ですが、現在の状況を考えると
「相性」は関係なさそうですね。
ホームと言うことで、再びポゼッションサッカーを優先させるのか、
気になるところですが、私はあえて「ポゼッション放棄」を提言します。

なぜなら、実力上の国が揃う本大会ではポゼッションサッカーなど出来ないからです。自意識過剰で失敗したのがブラジル大会です。
日本は世界レベルではまだまだ下です。組織的な守備の力を今のうちから磨いておくべきです。

しかも勘違いしてはいけないのは、日本のポゼッションサッカーは「意味のあるボール回し」ではありません。相手にとって脅威のあるボール回しではありません。
ただ回しているだけです。

相手を揺さぶり、走らせ、疲れさせ、組織を崩し、穴を見つけるためにパス回しを
しますが、日本はパス練習のためにポゼッションをしているみたいなものです。

つらつらと好き勝手に書いてしまいましたが、イラク戦に引き続き昨夜も
選手の強い気持ちが伝わってくる試合でした。
予選突破を目指して今後も一生懸命応援します。

最後に、ブログの性質上「オーストリア」と書くことに慣れているせいか
「オーストラリア」を何度も書き間違えました。

今回は「No  Kangaroo」ではなく「No Mozart」ですね。

稲田俊介(東京音楽院ディレクター)

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