みなさんこんにちは。ソプラノ歌手の分玉絢子です。
今日はオーストリアから声楽マスタークラスの様子をお伝えしたいと
思います。 ウィーンから1時間ほど電車で走ると、
豊かな自然に恵まれたハイリゲンクロイツという街が現れます。
ハイリゲンクロイツとは、聖なる十字架を意味し、オーストリア人なら知らない人はいない有名なハイリゲンクロイツ修道院があり、12世紀にロマネスク様式で建てられたこの修道院には今も多くの人が年間を通して国内外から訪れています。
その修道院の中でインターナショナル音楽アカデミーが、9月30日から10月4日にかけて行われました。声楽の他に、フルート、ギター、歌曲のコースが開講され、最終日には修了コンサートに受講生だけでなく、私たち講師陣も出演し、
華やかなコンサートとなりました。
実はこの講習会は、当初ウィーン国立音楽大学声楽科教授のケープラー先生が
担当する予定でしたが、直前に体調不良でキャンセルをされて、急きょ代理で
私が務めさせていただくことになりました。
声楽の指導は、ウィーン少年合唱団を始め、多くの合唱団で行っている他、ウィーン音楽アカデミーで声楽科の講師も務めておりますが、オーストリアでの本格的なマスタークラスは、私にとって初めての経験となりました。
レッスンは1人につき、1日に2回行います。まず30分間の個人レッスンを行い、時間空けてコレペティートア(伴奏者)つきのレッスンを30分行います。この方式は、私の恩師であるウィーン私立音楽大学の声楽科主任教授のコーメンコ先生がとられていたのですが、オーストリアではよくあるマスタークラスの方式のようです。
素晴らしいカイザーザールでレッスンをさせていただきました。
まず、私が大切にしていることは、マンツーマンのレッスンで、
「姿勢」「呼吸」「発音」「響き」の4つを作り上げることです。
ウィーン国立音楽大学では、声の研究がヨーロッパでも非常に進んでいますが、これを「ウォーミングアップ」(ドイツ語でAufwärmen)と呼んでいます。
スポーツ選手が、ウォーミングアップなしに、急に競技を行わないように、歌を歌う前には短くても必ずウォーミングアップを行わななくてはなりません。
声は身体自体が楽器ですので、身体全体が声を出す準備ができていないと、
ケガをする(声を壊す)リスクが高まるのです。
写真では残念ながら声をお届けできないのですが、どうしても大きな声を出そうとして、大きなビブラートがかかってしまっていた受講生も、
ウォーミングアップをしっかりやった後は、身体から自然に声が離れて、
いわゆる「喉声」が解消されていました。
そして、伴奏者つきのレッスンの素晴らしいところは、マンツーマンのレッスンで学んだことを、今度はピアノ伴奏つきで試してみることができる他、オーストリアには歌を専門とするコレペティートア(伴奏者)が大勢いらっしゃり、
まさに歌の専門家からアドヴァイスがもらえることです。
また、修道院の方が、撮影不可の貴重な美術室を案内してくださいました。 撮影不可なので、写真がないのですが、12世紀から今日に渡って守られてきた美術品、調度品、そして楽器の数々に目を奪われ、音楽が他の芸術とも一体となっていることを肌で感じることができる体験でした。
レッスン以外にも、受講生たちと食事を共にしますので、発声や進路などの話をする時間もあり、それもまたマスタークラスの良いところだと感じました。 普段は1週間に1度か2度のレッスンですが、このように毎日集中的にレッスンをすると、飛躍的に成長することがあり、それを側で見守るのはこの上ない幸せでした。
♪分玉絢子マスタークラスのお知らせ♪
・日時:10月23日(日)14時~19時(5コマ)
グループレッスン(50分)、基本代金5,400円+2人目から1人につき+1,000円です。・曲目:原則自由ですが、ドイツ歌曲がお勧めです。
・年齢、経験不問
・会場:東京音楽院 新宿5丁目11-20伊土ビル202号室
東京メトロ『新宿三丁目駅E2出口より徒歩3分』
お問い合わせ、お申込みは、info@kons-tokyo.comまたは090-6488-9324まで。
【分玉絢子プロフィール】
兵庫県立西宮高校音楽科ピアノ専攻を卒業後、声楽に転向、神戸女学院大学音楽学部声楽科を首席で卒業。同時にクラブ・ファンタジー賞受賞。関西二期会オペラ研究科本科修了後、2008年より渡欧。ウィーン国立音楽大学教育学部声楽科(声楽教育科)を最優秀の成績で卒業し、現在同大学院在学中。 リヒャルト・シュトラウス歌曲コンクール(ソフィア)第三位受賞など国内外のコンクールで入賞。
大学在学中より、ウィーン少年合唱団をはじめ、多くの合唱団のヴォイストレーナーを務める他、宗教曲のソリストとしても活躍。2016年、オーストリアにて行われたインターナショナル音楽マスタークラスにおいて、ウィーン国立音楽大学のケープラー教授の代理を務める。ウィーン音楽アカデミー声楽科講師。
東京音楽院Konservatorium Tokyo現地研究員。