ウィーン音楽研修 その① 音楽を愛せよ。そして楽譜に忠実であれ。

東京音楽院Konservatorium Tokyoの稲田です。
4月26日より7日間の日程で、ウィーンにて音楽研修を行っています。
研修の課題は色々ありますが、大きく分けて二つ。
一つ目は現地の幼児音楽教育の視察。そして二つ目はウィーンフィルハーモニー管弦楽団や世界的ピアニストで指揮者のDaniel Barenboim氏、Marta Argerichら超一流の音楽に触れること。
続きを読む ウィーン音楽研修 その① 音楽を愛せよ。そして楽譜に忠実であれ。

【お知らせ】6月4日 熊谷俊之 ギターリサイタル

2016年6月4日、渋谷タカギクラヴィア「松濤サロン」にて
熊谷俊之 ギターリサイタルが行われます。

Print

【詳細】

日時:2016年6月4日 18:30(開場18:00)
場所:渋谷、松濤、タカギクラヴィア松濤サロン
東京都渋谷区松濤1-26-4
Bunkamuraから徒歩3分
http://takagiklavier.com/salon.html

チケット:前売り3,500円(当日4,000円)
定員50名、先着順
お申込み:info@kons-tokyo.com
090-6448-9324

曲目未定

【熊谷俊之プロフィール】

Attachment-1

北海道出身。9歳よりギターを始める。昭和音楽大学短期大学部ギター科1期生に給費生入学し特別賞を得て同校卒業。読売新人演奏会、ノルウェー室内楽フェスティバル(Norwegian Youth Chamber Music Festival)、HAKUJUギター・フェスティバル「旬のギタリスト」、リヒテンシュタインギターフェスティバル等に出演する。チュニジアで行われた10月カルタゴ音楽祭(Octobre musical de Carthage)に出演した際には地元紙La Presseに「いくつかの音を聞いただけでたちどころに夢見心地にさせるような音楽」「熊谷俊之の弦をいつくしむような柔らかくて繊細な演奏が旋律を包み込んだ」と称される。ウィーンでは楽友協会主催の「若手音楽家シリーズ」に登場し弦楽四重奏と共にリサイタルを行った。第50回東京国際ギターコンクール2位、第7回ミゲル・リョベート・ギターコンクール3位、同時にカタルーニャ現代音楽賞受賞(スペイン)、第14回アントニー・ギターコンクール2位(フランス)。2012年1stアルバム「ソナタ~ボッケリーニ賛歌~」をリリースし芸術誌特選盤に選ばれる。2015年クラリネット奏者岩瀬龍太とのアルバム「Oirakanari」をリリース。ルネッサンスから現代までのレパートリーを積極的に取り入れ、他楽器とのコラボレーションも積極的に行っている。現在日本とヨーロッパを中心に活動を展開している。ウィーン国立音楽大学大学院を審査員満場一致の成績で修了。リュートをルチアーノ・コンティーニ氏に師事、ギターを高田元太郎、福田進一、アルバロ・ピエッリ各氏に師事。
東京音楽院Konservatorium Tokyoギター科主任講師、
昭和音楽大学ギター科非常勤講師。

【お知らせ】東京音楽院荻窪教室開校のお知らせ

2016年5月、東京音楽院Konservatorium Tokyo荻窪教室が開校します。
対象楽器はピアノ、年齢は4歳からシニアまで。

場所は荻窪駅徒歩12分の閑静な住宅街(南荻窪)に位置します。
ピアノはグランドピアノに加え、アップライトも備え
2台ピアノのレッスンにも対応しております。

DSC_0068DSC_0070

開催コースは以下の通りです。

・幼児のためのレッスンコース(4歳以上)
・小中高レッスンコース
・音楽進学コース
・留学準備コース
・大人のためのレッスンコース
・60歳以上の人のためのレッスンコース

(講師:砂村友希先生)

※梯剛之マスタークラスは新宿教室
のみとなっております。

開校記念に際し、体験レッスン(30分)を無料とさせて頂きます。
(2016年5月末日まで、おひとり様1回のみ)
レッスンのお申込みお問合せは、当ホームページのお申込み、お問合せフォーム、
またはinfo@kons-tokyo.com よりお問合せ下さい。

【Pause】ウィーンの楽しみ~カフェ文化~

「音楽の都」ウィーンでは、オペラやコンサートに足繁く通うことも楽しみの
ひとつですが、伝統あるカフェでゆったりとした時間を過ごすこともまた素敵です。DSC_0133

今回は、ちょっと前になりますが、イースター休暇中の写真とともに
ウィーンのカフェをご紹介をします。
DSCN5657

ウィーンには至るところにカフェがあり、朝食を食べたり、ゆっくり新聞や本を読んだり、またコンサートやオペラ後にワインを飲みながら語り合ったり…と皆さん
様々に過ごしています。

私の留学中も、散歩やカフェでの語らいは、息抜きの大事な時間でした。

実は留学前はコーヒーが飲めなかった私ですが、ウィーンのカフェでケーキと一緒に頂くコーヒーにハマってしまいました。

こちらはカフェ「オーバーラー」のショーケースとイースター仕様のショーウィンドウ。ここのケーキは甘すぎず、日本人にも評判と言われています。
地元の人々で混んでいますが、明るくて良い雰囲気です。
DSCN5655

こちらはかの有名なホテルザッハーのザッハトルテ。ここもいつも混んでいるのですが、ゆっくりするのには夜カフェがおすすめです。この日もオペラのあとに、ウィーンに来ていた友人と行きました。甘すぎると言われることもあるザッハトルテですが、ウィーンに住むうちにすっかり慣れてしまいました。
IMG_1286

 また、長い冬を越えて、花や木々が芽吹きはじめ、春を感じるイースターの時期は
本当にきれいで、街も賑わっています。

イースター市と、有名なモーツァルト像の前のお写真。
DSCN5583DSCN5594

春のウィーンは、本当におすすめです!

山口友由実  ピアニスト、東京音楽院ピアノ科講師

 

【コンサートレポート】vl.伝田正秀さん&pf.實川風(かおる)さん

2016年4月10日ベーゼンドルファー東京展示サロン(東京、中野坂上)にて
伝田正秀ヴァイオリンリサイタルが行われました。

DSC_0030

【プログラム】
クライスラー:マルティーニの様式によるアンダンティーノ
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 g-moll  Op.26
休憩
實川風ソロ
ドビュッシー:ヒースの荒野
リスト:パガニーニ第練習曲より 第2番 Es-Dur「オクターブ」

サラサーテ:序奏とタランテラ Op.43
:アンダルシアのロマンス Op.22-1
:スペイン舞曲集 Op.23-第1番 祈り
:バスク奇想曲 Op.24
:ツィゴイネルワイゼン Op.20

アンコール
アメリカの思い出、美しきロスマリン、チャルダッシュ

ヴァイオリニストは、読響アシコンで当音楽院ヴァイオリン科講師伝田正秀さん。
ピアニストは、ロン=ティボー国際コンクール3位入賞の實川風(かおる)さん。

DSC_0049

まず、伝田さんの演奏について。
前半はブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番、そして後半は伝田さんが得意とする
サラサーテ小品集。
ブルッフは、繊細かつダイナミックな演奏で
特にメロディックな部分は、彼の歌心が
思う存分感じられ
聴き手の心に深く染み込む演奏でした。

伝田さんの演奏は一度耳にすると虜にしてしまう魔法が宿っているかのようです。
一音一音に体温が感じられ、音の毛細血管とでも言うべき
音楽の血が見事に全体に行き届いています。
聴くたびに思いますが、彼の作り出す音楽は芳醇な赤ワインの様です。
(やはりホイリゲに足しげく通ったからでしょうか)

DSC_0031

続いてピアニスト實川風(じつかわ かおる)さんについて。
コンサートピアノにも関わらず、音量のバランスを絶妙な加減でコントロールし
アコーギク、ダイナミックなど、見事にヴァイオリンと調和していました。
また、強い音でも決して音が割れることのない打鍵は
實川さんの特長と言ってよいでしょう。

個人的にはソロのドビュッシー「ヒースの荒野」が非常に良かったと思います。
多彩な色彩感覚と純真無垢でやわらかく上品な演奏は
南仏カール=シュル=メール時代の
ルノワールの絵画を思い出しました。
img04_l
今後もファンが増えていくと思います。

ちなみに實川さんは9月からオーストリア・グラーツに留学予定。
これからの活躍がとても楽しみな若手ピアニストです。

最後に本日のピアノ、ベーゼンドルファーについて。
DSC_0024
ベーゼンドルファーは、オーストリアが生んだ最高級のピアノメーカーで
その歴史は188年になります。かつてフランツ=リストも愛用し
クオリティはスタンウェイと同等、もしくは上との評価も受けています。
個人的にも非常に好きなピアノです。
中野坂上のサロンでは、試弾もできます。
是非一度訪れてみてください。

【コンサートレポート】野瀬栄進Jazz live at Kons.

FullSizeRender_1

FullSizeRender_5

FullSizeRender

FullSizeRender6

前日にN.Yより帰国した野瀬さん。
当日開演30分前に会場入り。さすがNew Yorker。(スタッフ泣かせ・・)
Jazzは畑違いなので、あまり詳しく言えないが
N.Yの空気が存分に感じられ、魂が揺さぶられる演奏でした。

クラシックのコンサートにはないその場のノリもJazz特有のもの。
急きょ野瀬氏と同郷(北海道)の当音楽院ギター科講師・熊谷先生も飛び入り参加し、お互いにキューバ出身の作曲家の曲を披露。
会場を大いに盛り上げていた。

アンコールは、以前当ブログにて書かせて頂いたKUBAを披露。

良いLiveかどうかは、終演後のお客さんの退散状況を見るととても分かりやすい。
23時を過ぎても中々帰らないお客さん。

と言う訳で、素晴らしいLiveでした。

今日を皮切りに全国ツアーがスタートした野瀬さん。
体調に気を付けて頑張ってください!

【座談会】ヤマハ株式会社・何木明男氏を囲んで

「ヤマハ・クラシックギターGC82C(2014)モニター懇談会”設計者に聞く”
日時:2016年4月3日
会場:東京音楽院Konservatorium Tokyo

参加者:何木明男(ヤマハ クラシックギター設計担当)、
熊谷俊之(ギタリスト、東京音楽院ギター科講師)
Florian Palier(ギタリスト)
飯田敏史(ギタリスト)
稲田俊介(ピアニスト、東京音楽院ディレクター)

熊谷:モニターとしてお借りしたギターを本日のコンサートで使用しました。感想はいかがでしたか。

何木: まずはギターデュオとして非常に貴重なものを見れました。日本人と海外の方のデュオでの演奏を聴く機会は大変少ないです。もちろん、演奏も素晴らしかった。
DSC_0278DSC_0280

熊谷:ありがとうございます。ギターについてですが、何か感じることはありましたか?

何木:今日の時点ではまだ「生の音」だと感じます。しばらく弾き込まれていないからでしょう。1年くらい誰かの手で弾かれる機会があれば、かなり変わってくるものです。このギターは、直近だとヤマハホールで演奏したGFA優勝者のエカチャイ(タイ)に使用されました。それ以来しばらく眠っていた状態です。

飯田:ヤマハの最上位モデルは東京国際ギターコンクールの優勝者の演奏で使用されてきましたね。エカチャイ以前も同様のギターを使用されてきたのでしょうか。

何木:サネル・レドジッチ(ボスニア)までは杉のギターを使用することが多かったと思います。それ以前だとマルコ・デル・グレコ(イタリア)が松の楽器を使用していましたね。

熊谷:楽器製作に関して、ヤマハが求めているのはどのような楽器なのでしょうか。

何木:基本としているのはサントス・エルナンデス、ハウザーを中心としたトーレスを軸にしたモデル、また杉のモデルはマヌエル・ラミレスの音を軸にして製作しています。

飯田:一つのモデル、ではなく、杉と松で2つのモデルを作り分けてきたのですね。

何木:そうですね。しかし時代の変遷か初期の時代を支えた職人がすでに五十代に差し掛かっています。世代交代の時期ではありますが、技能伝承はYAMAHAでも重要な課題になっています。

飯田:何木さんは設計者として長年関わってこられたとのことですが、設計の視点からしても製作現場の変化は影響が感じられるのでしょうか。

何木:ヤマハにはクラシックギターを作る前から木工、塗装の熟練した経験を持っている職人達がいます。設計した者が高品質の製品として出来上がるまでには熟練した職人の技術は不可欠です。作業の音への影響をみつけるのは主に設計者の仕事になります。それを熟練した職人の作業に反映させて音を改善していきます。

熊谷:それが今後は若い世代に切り替わるということですね。

何木:そうです。経験があるとないとでは製品の質が変わってしまいます。経験による誤差の修正、とでも言うのでしょうか。大学や専門学校を出て就職する人たちには、「職人」としての経験を引き継ぐ必要があります。しかし同じ設計でも、作る人によって大きく変わってしまうのですから、 それは簡単な事ではないのです。

熊谷:伝統を伝える難しさ、とも言えるでしょうか。会社として製品を作るという性質もあって、重要な課題ですね。

————————————————————————————

熊谷:設計の観点から、今までにヤマハ独自のクラシックギターのアイデアといえば何がありますか。

何木:それはもう、サイレントギターです。

熊谷:あれは世界的なヒット作ですよね。

何木:もともと社内公募で作られたものでした。アイデアを出した当初は絶対売れないと思っていました(笑)。基本的にはクラシックギターの製作技術の応用ですから、製作技術の賜物だったかもしれません。

熊谷:ギタリストの間でも重宝されているものだと思います。確か、Florianも持っているよね?

Florian:ああ、1台持っていて、家で使っているよ、あれのおかげでうちの隣に住んでる人が喜んでる(笑)

熊谷:ギタリストの隣に住んでいる人皆が喜ぶ発明だったと言えますね(笑)

何木:サイレントギターは「1億ギタリスト計画」とも呼ばれるアイデアの一つでね、各家庭で皆がギターを弾けるようになる事を意識して、作られたんですよ。

熊谷:それは凄いですね。裾の尾を広げる活動として、かなり重要な役割を担っていると思います。

飯田:ギタリストの間でも著名な演奏家がステージの上で、アンプに繋いで使用している例もありますね。

何木:アンプにつなぐという点では、生音では広げられない部分があるとも言えます。

飯田:しかし、生音の情報量はアンプに通す事で当然減少してしまいますよね。

何木:そうですね、ギタリストの意見を聞くと、やはり生音主義の方が多いようです。

熊谷:生音に近いアンプができれば世界的なヒットになると思います。ギタリストは皆熱望しています。

稲田:ギターに限らず、アコースティックな楽器を弾く人たちは皆熱望しているでしょうね。

何木:しかし人は皆それぞれでしてね、アンプの音でも演奏が良くて感動する人もいるんですよ。生音じゃないと感動しない人もいます。人の違いなんです。一つの視野を絶対的なものと考えずに、どちらの分野にもアプローチする価値はあると思います。

熊谷:そういえばギタリストは音源を聞く時、ほとんど良いオーディオ機器を持っていないですね。私はまだ日本に帰ってきたばかりなので、音源をパソコンや携帯のスピーカーで聴いています(笑)

ウィーン時代にすこしだけ良いのがありましたが、知り合いに売ってきた。(笑)

稲田:音楽家自身は生音が絶対的に良い事が分かっているので、オーディオに投資していないのでしょうね。

熊谷:しかし、Youtubeで演奏を聴いても個性のある演奏って、すぐ分かりますよね。あ、誰の演奏だなって。そしてYoutubeでもいいなと思える演奏はある。

何木:確かにそうですね。それはアンプに通した音の世界と同じ事が言えますね。

熊谷:つまるところ、音楽の感動は必ずしも音量ではないと思うのです。例えばリュートのコンサートは音量は小さいのですが、それはそういうものだから気にならない。

飯田:しかし、ギターには音量が必要に感じる人がいる。

熊谷:ギタリスト自身も感じる事がある。でもこれは不思議な事です。車で言えば軽自動車がトラックの馬力に勝とうとしているようなもので、そもそも素材も目的も違うのです。しかし、大きな音が出る楽器が、大きな音を出す演奏が良いという意見が、なぜかチラホラと見受けられるわけです。

何木:ギターの良さって、「聞こうとする」事なのではないかと思います。会場にいる人全員で作り出す音楽、とも言えるかもしれません。「聞こうとする」音楽は「聞こえてくる」音楽とは別の捉え方をした方が、豊かに味わえるでしょうね。
======================================

世界的ヒット商品”サイレント楽器の産みの父”としても有名な何木氏(ヤマハ株式会社)を囲んで、3名のギタリストが積極的に意見交換をしました。
演奏者と製作者、それぞれ立場は違えど目指すものは一緒であることが
再確認できる座談会となりました。

【コンサートレポート】砂村友希さんpf, 山下アンナさんvl

2016年4月3日(日)東京中野区にあるミュージション野方にて
現在ウィーンより帰国中のヴァイオリニスト山下アンナさんと
東京音楽院ピアノ科講師砂村友希さんによる
ヴァイオリンとピアノのサロンコンサートが行われました。

IMG_3247

【出演者】
砂村友希さん pf
山下アンナさん vl

【プログラム】
バッハ イタリア協奏曲
シューマン ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第一番
クライスラー 前奏曲とアレグロ
パガニーニ カンタービレ
ショパン スケルツォ第2番
リスト  愛の夢
サンサーンス イザイ編曲 ワルツカプリス Op.52-6

【出演者プロフィール】

IMG_3246
【山下アンナさん】
愛知県出身。特別奨学金奨学生として尚美学園大学に入学。
同大学を首席で卒業。その後ウィーンへ留学。
現在はウィーン私立音楽大学大学院に在学中。2015年からウィーン交響楽団
の公演にエキストラとして出演。
学生音コンなどコンクールにも多数入賞。

DSC_0240
【砂村友希さん】
宮城県出身。14歳でウィーンへ留学。ウィーン国立音楽大学
予科に入学し、同大学演奏科コース、大学院を経て、現在は同大学研究科に在籍中。
アマルフィ―国際音楽コンクール3位入賞など
多数の国際コンクールに優勝または入選。オーストリアのみならず、ドイツ
フランス、フィンランドなど各地で演奏活動を行っています。
東京音楽院Konservatorium Tokyoピアノ科講師。
(詳細はこちら)
http://www.kons-tokyo.com/teachers/

DSC_0168

【演奏について】

プログラムの中でも特筆すべきは、シューマンのヴァイオリンソナタ第一番。
この曲はピアニスト泣かせとも言うべき高度な演奏テクニックと
アンサンブルテクニックを要します。
演奏テクニックとは、まさしく演奏技術のことを意味しますが
この曲は、慣れないリズム、弾きづらく速いパッセージなど
演奏者にとって不安定要素満載の難曲にも関わらず、砂村さんは
見事にそれらの要素を克服し、聴き手に一切の不安感を持たせない
見事な伴奏でした。

一方、山下さんのヴァイオリンは、精練で心地よい音色、
決して無理に情に訴えようとしない旋律は、
とても好感が持てました。
おそらくウィーン交響楽団という世界有数のオーケストラで
吸収した音楽的気品が背景にあるのかもしれません。

この曲はシューマンの精神状態が徐々に悪くなり始めた
ちょうどその時に書き上げられました。
個人的な意見ですが、特に3楽章を初めて聴いた時に
真っ先にシューマンの精神状態とこの曲の
書かれた時期の関連性について思いました。

他のヴァイオリンソナタとはまた一味違った名曲です。