6歳までに聴かせたいクラシック100選~その1~

生徒さんの親御さんから、「子どもにどのような曲を聴かせたらよいでしょうか?」といった質問を度々頂きます。そこで、「6歳までに聴かせたいクラシック100選」と名を打ち、独断と偏見のもとシリーズで1枚ずつご紹介していきたいと思います。


記念すべき1枚目は、こちらです。

モーツァルト:
・ピアノ協奏曲第26番ニ長調K.537『戴冠式』

フリードリヒ・グルダ(ピアノ)
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
ニコラウス・アーノンクール(指揮)
録音:1983年9月、コンセルトヘボウ、アムステルダム(ステレオ)

モーツァルトの後期ピアノ協奏曲から2曲を収録。西暦2000年1月に急逝したウィ-ンの名ピアニスト=グルダとアーノンクールによる極上の共演盤です。モーツァルトを特に得意としたグルダのディスコグラフィーの中でも最高の評価を受け続ける1枚であり、明晰で即興性に富み生気溢れる両者の演奏は、クラシック演奏史の中で不滅の価値をもつ名演です。(ワーナーミュージックより)

 

・なぜ聴かせたいのか?

モーツァルトの作品は、一般的に子どもが親しみを持ちやすいと言った特徴がありますが、特にこのピアノ協奏曲第26番「戴冠式」はモーツァルトの音楽が持つ“Lebendig„(ドイツ語:生き生きとした)が如実に表れている作品と言えるのではないでしょうか。

第1楽章冒頭は、快活なリズムの元、「一体これから何がはじまるのだろう?」と、
ワクワクする旋律。そして、やさしく語りかけてくるようなピアノのメロディー。グルダのモーツァルトには喜び、悲しみ、聴き手を驚かせてやろうという「いたずら心」、おそらく彼の性格がモーツァルトに近いのでしょう。
(余談ですが、グルダのショパンにはそれがめっきり感じられません)

そして、なんといっても第3楽章ですね。個人的に大好きです。
落ち込んでいるときなど、特に元気をもらいます。

グルダの安定したテクニックとまるで歌手が歌っているかのような表情豊かな旋律に
彼の豊かな歌心を感じます。

この曲を指揮しているアーノンクールは、こちらもまた大変破天荒なお方ですが、グルダへのリスペクトを忘れず、オーケストラを見事にピアノと調和させる作業にエネルギーを費やしているのがよくわかります。

かつてウィーン楽友協会で、アーノンクールが組織・指揮をしていた「concentus musicus wien」を何度か聴いたことがありますが、彼もまた「芸術は常に新しいものである」をポリシーに、様々なことにチャレンジをし続けていました。
だからこそ彼の音楽にも「Lebendig」が存在しているのではないでしょうか。

モーツァルト、グルダ、アーノンクールという3人の芸術家がもつ特性が
同じベクトルを向いているからこと、こういった素晴らしい演奏が奏でられるのだと思います。

特に小さな子どもは、直観からくる印象で好き嫌いを判断する傾向があると思いますがこの演奏は、まさに子どもの直観にダイレクトに語り掛けてくれる1曲だと思います。

強く強くお勧めする1枚です。

なお、下記動画は、ご紹介したアルバムではありませんが、グルダが指揮、演奏(ミュンヘンフィル)をしているモーツァルトピアノ協奏曲第26番「戴冠式」です。
グルダの演奏がご覧いただけます。ご参考までに。

ちなみに同アルバムに収められているピアノ協奏曲第23番も大変すばらしい名演ですが、こちらは他の演奏家の回にご紹介させて頂きたいと思います。