2017年6月18日(日)福島県福島市音楽堂大ホールで開かれた
「ジョン・健・ヌッツォリサイタルin福島」に梯剛之さんがゲスト出演しました。
昨年7月、ジョン・健・ヌッツォさんの呼びかけで開催された
熊本震災復興チャリティーコンサート(白寿ホール)をきっかけに、
再共演が実現しました。
(リハーサルをするヌッツォさんと梯さん)
ヌッツォさんと梯さんは、ウィーン在住時代からの旧知の中で、
かつて二人はイタリアで共演したことも。
福島音楽堂は、デンマーク製のパイプオルガンを備え
ホールの残響は3秒と、まるでヨーロッパの教会のような音響でした。
前半は、ヌッツォさんが高田絢子さんの伴奏のもと、
さくらさくら、荒城の月といった日本の歌、
そしてベートーヴェン、シューベルトなどのドイツ歌曲を歌われ
その後梯さんがベートーヴェンピアノソナタ「月光」
第一楽章を演奏。
後半はオペラ「トスカ」から2曲など
ロマンティック、情熱的な曲を揃えたヌッツォさん。
一方梯さんは、ショパンのノクターン「遺作」第20番と
ドビュッシーのベルガマスク組曲よりプレリュードを演奏。
最後は、プッチーニの「誰も寝てはならぬ」を熱唱。
詰めかけた500名を超える聴衆を唸らせました。
ヌッツォさんは、伸びのある歌声と艶のある響き、
そして情熱的且つパワフルな音楽で、圧倒的な存在感を放っていました。
また、軽快なトークと時折ジョークを交えたMCも魅力のひとつ。
そして何よりも、ヌッツォさんの人柄が本当に温かい。
リハーサル、楽屋など、スタッフの方一人ひとりに
気をかけ、みんなが一つになるように良い雰囲気を作り出してくれました。
(終演後に二人で)
良いコンサートは、きっとそういうところから作られていくのだと思います。
そんな温かい輪に梯さんも迎えられ、
ベートーヴェン、ショパン、ドビュッシーをのびのびと演奏。
月光では、まさに月光がホールに差しているかのような錯覚を覚える。
静寂の中、メロディーがゆっくりと奏でられ
心が移り行く様を歌のように表現。
ショパンのノクターン「遺作第20番」は
月光と同じ嬰ハ短調ですが、
全く違う世界観を作り上げ、聴く者の耳をどんどん研ぎ澄ましていく
そんな演奏でした。
ドビュッシーは、前者の2曲とは打って変わって
ダイナミックで光量溢れる演奏。
梯さんは演奏前に楽屋で「ドビュッシーの場合、ぼくは
絵画のような様々な色彩を感じる」と語っていましたが
彼の演奏を聴き、ルノワールが南仏のカーニュ=シュル=メールで描いた
庭の絵画を思い出しました。
梯さんのドビュッシーには、まばゆい光と色とりどりの色彩、
そして光り輝く生命力が宿っていました。
福島の初夏を彩る素晴らしいコンサートでした。