【音楽の友8月号】梯剛之さんのコンサート批評が掲載されました。

2016年6月4日、東京文化会館小ホールで行われた梯剛之ピアノリサイタルの批評が
音楽の友8月号に掲載されました。

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【批評ご紹介】

近年、著しく進化した梯の音質。
それゆえ前半のモーツァルトと後半のベートーヴェンで、
ウィーンの森を散策した感。
モーツァルトでは、変奏形式が軸となって組まれている。
≪サルティの主題による変奏曲≫はその名のとおり変奏型だが、
軽快な展開はモーツァルトのオペラそのものの愉しさ。
「ソナタ第5番」はソナタの骨格の中にある、甘美なフレーズと
装飾音符が変奏の役となる。
何より各楽章の構成を梯は確固と聴かせ、心地良い速度は自然界の摂理に等しい。
「ソナタ第11番≪トルコ行進曲付き≫」では形式の成熟を示す。
そしてやはり自然なテンポ感で、加えて梯独特のアゴーギグゆえ、
ベーゼンドルファーの美音が際立つ。
ベートーヴェンでは、真理の森へと入って行くよう。
「ソナタ第8番≪悲愴≫」は抑えた喜怒哀楽が楽曲の真意をつき
(中でも第1楽章が秀逸)、「ソナタ第31番」は人生を粛々と歩む様相。
長調の明るさも、昼間の陽射しのようなモーツァルトに対して、
夕方の木漏れ日のようなベートーヴェン。
そう奏する梯の打鍵に感服。
(6月4日・東京文化会館<小>)<上田弘子>

※「音楽の友8月号」は書店または楽器店にて購入頂けます。
(定価998円)

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