2018年7月11日 NHK Eテレ~又吉直樹のヘウレーカ!~「ピアノで脳の働きが良くなるってホント!?」 を拝見して

NHK Eテレ~又吉直樹のヘウレーカ!~でピアノと脳の関係について取り上げられていましたので、個人的な感想と共にお伝えします。

番組ホームページはこちら。
http://www4.nhk.or.jp/heureka/x/2018-07-11/31/13694/1426012/


この番組は、お笑い芸人で作家の又吉直樹さんが、日常の暮らしに潜む疑問を
科学的観点などをたよりにひも解く教養バラエティ番組です。

その前に、この番組名の「ヘウレーカ!」という言葉ですが、その響きに
あまり耳なじみのない言葉でしたので、ケンサクしてみました。

番組公式WEBによりますと、『「ヘウレーカ」とは“わかった”“発見した”という意味で古代ギリシャの科学者、アルキメデスが「アルキメデスの原理」を発見したときに、嬉しさのあまり裸で「ヘウレーカ!」(古代語の εuρηκα)と叫びながら街中を走った、という故事にちなんでいます。』とのこと。

ここで気になるのは2点。

1、アルキメデスの原理って?
、裸で街中を走り回った。

この2点については、ぜひ調べてみたい、或いはもう少し掘り下げてみたいところですが、当ブログの内容上割愛します。

さて、番組の内容に話を戻し・・・・

おおよそ、3つのQについて、又吉直樹さんとソニーコンピュータサイエンス研究所研究員でご自身もピアノ演奏をされる古屋晋一さんが、ピアノを弾きながら対談形式でひも解いていくというものでした。

番組で指南して頂く古屋晋一さんは、とても興味深い経歴の持ち主で、大阪大学 基礎工学部卒業後,同大学大学院 人間科学研究科,医学系研究科を経て,上智大学 音楽医科学研究センター センター長,ハノーファー音楽演劇大学 客員教授を兼務。主なピアノ演奏歴に,日本クラシック音楽コンクール全国大会入選,Ernet Bloch音楽祭出演,ソロリサイタルなども行っているそうです。

(チノパンにジージャン姿のその風貌からは、とても研究者兼ピアニストという様には見えませんでした)

さて、これより番組で取り上げられ、特に印象に残った3つのQについてご紹介します。

Q1,「聴くと弾く、脳ではどう違う?」

音楽を楽しむ方法として、「聴く」そして「演奏する」があります。
これらの行為が、脳や体にどのような影響を及ぼすか、また、「聴く」と「演奏する」では、どのような違いが起こるのか?

この疑問を「心拍数」を計測して、調べてみました。

古谷さんはバッハの平均律第一巻1番C-Dur プレリュードを演奏。
特殊な装置を付けた又吉さんがそれを聴き、または自身で演奏し、心拍数を計っていくというもの。

◇心拍数(又吉さんの計測結果)

平常時 80
音楽を聴いているとき 95
演奏しているとき 117.6

平常時、聴く、演奏するではそれぞれ15以上の差が生まれました。

心拍数は心の動きを表していますから、感動のバロメーターと言えます。

単純に聴くよりも、演奏する方が心が動いているということになります。

そして、感動をすると、快感、やる気、学習能力、運動機能や記憶力といった働きを司る神経伝達物質のドーパミンが出るということがわかているそうです。

Q2.「両手で弾くとき、脳ではどんなことが起きるのか?」

とっても基本なことですが、ピアノは左右の手と指が別々の動きをします。
右手は左脳から、左手は右脳から指令を受けています。
この時、左右の脳の間にある「脳梁(のうりょう)」を通して指令が
漏れてしまうことがあるそうです。
これが左右別々の動きをする難しさの原因となっている様です。

この指令の混線を防ぐためには、脳梁を太くすることが大切です。

下の図は、音楽家の脳と非・音楽家の脳のレントゲン図です。
赤色の線の部分が脳梁で、脳梁が太いと情報処理能力が上がるので
両手で弾いても、左右が混線せずに演奏できるのです。

ちなみに、脳梁が一番太くなる時期は7歳くらいだそうです。
これまで、11歳くらいまで脳梁は成長すると言われていましたが、
最近の研究では大人や高齢者でも大きくなることが渡ってきたそうです。

もっとも、遺伝子レベルで脳梁のサイズは決まっていますが、
生まれてからの環境でも大きくなる「伸びしろ」が備わっているそうです。

Q3.「大人になってからもピアノは弾けるの?」

個人的に番組を通して一番印象的だったのは、このくだりで出演されていた林さんです。(御年70歳)
65歳で退職後、ピアノを習い始められたそう。
番組ではショパンのノクターン12番を演奏。(2番や8番に比べあまりコンサートでは演奏されない)
技術的には、完ぺきではありませんでしたが
ピアノが好き、この曲が好き、ショパンが好き という静かなる林さんの思いが、
曲を通してひしひしと伝わってきました。

林さんが「作曲家が心血を注いだ芸術作品を自分で再現できる、これが一番の楽しみ」と語っていたことに、とても心を打たれました。

その後、番組では「脳科学で効率よく上達する方法」として下の3つのポイントを紹介

1、好きな曲を弾く

音大やコンクールを受験する、或いは音楽を仕事としている方は、嫌いな曲も勉強しないといけませんが、趣味の範囲であれば、わざわざ興味のない曲を弾く理由はないと思います。

2、休憩を取る

これはピアノだけなくすべてのことについて言えると思います。
脳を休める、リフレッシュすることは、集中力を蓄える、興味を持たせるためには必要なことです。

3、イメージトレーニングをする

スケートの羽生結弦選手や偉大なプレーヤーのほとんどが取り組んでいると言われています。
イメトレをしているときの脳の動きは、実際に体を動かしているときと同じ動きをするそうです。

そのほか、楽器に向かうだけでなく、美術館に行って絵画鑑賞したり、街や森を散歩するなどして、心の栄養を取ることも大事だと紹介していました。

と、ここまで総じてどれも共感できたのですが、
「ピアニストの動きを再現する特殊な装置を装着して練習すれば、練習中本を読んでいても上達する」というくだりには、全く同意できませんでした。
脳を他のことに使って手だけ動かしても、それは無意味な反復練習に過ぎません。
この点は非常に残念でした。

ただ、全体的には脳の動きや効果についてとても分かりやすい番組でした。

余談ですが、又吉さんと古屋さんは、サッカー経験者ということで、
ワールドカップの時期ということも相まって、
時折サッカーネタを例に解説していたことに好感が持てました。
又吉さんは学生時代、アルゼンチンが生んだ史上最高の選手マラドーナに憧れて、左足しか使わなかったそうです。
ちなみに左足の技術だけで言えば、同じく元アルゼンチン代表で横浜マリノスでも活躍したラモン=ディアスの方がうまかったと思います。(マラドーナとディアスは、同時期にアルゼンチン代表でプレーしましたが、仲は悪かったそうです)

以上、筆者の独断と偏見による番組雑感でした。
長い間お読み頂きありがとうございました。